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イラストで伝わる情報
私はビジネスの勉強会に参加しているのですが、先日、「ファシリテーター」なるものを担当しました。
ファシリテーターとは、簡単に言うと、「良い会議へ導く進行役」のこと。
勉強会の内容は、勉強会主催者が抱える仕事の困りごとを解決することです。
主催者の業界や仕事内容を参加者に理解してもらうために、私が主催者の会社を見学し、客観的に感じたことを勉強会で説明する時間が与えられました。
うまく伝わらなければ、そもそも解決するアイデアが参加者から出てこないので、これは大役です。
しかも、この主催者は、実は某1部上場企業にお勤めの会社員。
営業部署に配属され、営業成績を伸ばすにはどうすればよいかを会社には内緒で身銭を切って、勉強しているのです。
よって、私がその会社を堂々と見学するわけにもいかず、取引先のホームページを作成する業者という体裁で、主催者の会社に潜入しました。
私自身、仕事の打ち合わせ以外で、見ず知らずの会社に入るのは初めてです。
しかも、私は長年、デザイン業界にいたので、営業担当者が大勢いる企業も初めてなのです。
社内は、さすが営業担当者が多い会社だけあり、そこらじゅうで話し声がしています。
また、創業50年以上の会社なので、独特のしきたりで進行される朝のミーティング。
今まで見たことのない光景と写真を撮ることもはばかれる雰囲気に圧倒されて、見学は終わってしまいました。
さて、これをどう伝えればよいでしょうか。
言葉を尽くしても、伝わる自信はありません。
ということで、イラストで表現することにしました。
それがこれです。
勉強会の当日は、このイラストに言葉を添えて報告しました。
参加者からは、
「なぜ、皆、立って話しているの?」
「込み入った話になったらどうするの?」
「机の上はなぜ何も置いていないの?」
「(イラストを指差して)この雰囲気では、言いたいことも言えないな」
などの意見や質問があがってきました。
このイラストを見て、質問が出たり、話が深くなり、思っていた以上に、この企業の持つ独特な雰囲気が伝わったことに驚きました。
私がデザインを作成する手法として、文字ばかりでは紙面全体を見た時に読みづらい印象を与えてしまうため、それを緩和し、また、紙面をにぎやかにするためにイラストを挿絵や捨てカットとして使うことがありました。
しかし、イラストは写真とは異なり、無駄な部分を省略し、必要な箇所を強調できるのがメリットだと今回、改めて感じました。
すなわち「デフォルメ」ができる。(当たり前のことではあるのですが。)
ちなみに、下図は商品の使い方を解説したイラストです。
背景を削除し手元だけを強調しました。
「デフォルメ」ができることは、もちろん、頭では分かっていましたが、イラストが持つ本来のこの強みをしばらく忘れていたように思いました。
漫画で描くチラシ、漫画で描く会社概要という手法もありますが、いつか提案してみたいと思いました。
インパクトのあるチラシデザインと集客のその後
前回お届けした「インパクトのあるチラシを作成して欲しい」という歯科医の話の後日談です。
院長の顔写真は載せない。
患者の声も取れず、載せない。
治療料金の内容説明はなく料金のみ掲載。
よくある質問も不要。
ここまで掲載内容が絞られてしまうと、歯科医院の特徴を出しにくく他との差別化ができません。
今や歯科医院はコンビニエンスストアより数が多く、飽和状態と言われています。
デザイン性だけでインパクトを出したチラシでは、必ずしも集客に結びつかないのではないかと思ったのです。
チラシの反応がなければ、デザイナーの責任だと言われかねません。
この内容を前回、配信した後、読者からいくつか感想をいただきました。
その内容は、
「こういう方はよくいます!デザイナーの私はいつもモヤっとしながら対応していますが、HAT TOOL DESIGNさんはどう対応したのですか?」
というものでした。
今回は対応方法をお届けします。
この歯科医が、集客の基本中の大基本である「顔写真を載せる」ことをなぜ拒むのかを考えてみました。
おそらく、「恥ずかしい」からだと思いました。
その気持ちは分からなくもありません。
しかし、多くの方は「背に腹は変えられない」と最終的には顔出しされます。
顔出ししなければ、集客もできず、そのため、患者の声がとれません。また、依頼できるような信頼関係のある患者がいません。
この歯科医の場合は、プライドがあり、「そんなことまでいちいちチラシで説明しなくても歯科技術があれば集客はできるもの。デザイナーの技術でかっこよくてインパクトのあるチラシを作成し、目に止まるようにして欲しい」と思っているのではないかと私は感じました。
この歯科医の心の問題で、今までの経験などから、このような思考が形成されたのだと思いました。
よって、いくら説明の仕方をあれやこれや変えても、説明の時間を費やしても、ご自身がプライドを捨てない限り、デザイナーである私が心を変えるのは至難の技。
現に、これまで同じように説明した結果、納得して考えを変えたクライアントはたくさんいらっしゃるので、こればかりは、一度、壁に当たってご自身で原因を考えていただくしかありません。
ということで、ある程度のところで見切りをつけて(だいたい2、3度目のメールか電話のやりとりで)、「集客には結びつかないかもしれません」と伝えた上で、この歯科医のいう通りに見た目だけを重視して作ります。
私にとっては、もう、割り切りです。
おそらく、集客はうまくいかず、作成した後、この歯科医からのリピートは二度とないと思います。
そのようなものを最初から分かっていて作るのは、正直、苦痛でしかありませんが、仕方ありません。
さて、ビジネスでうまくいく人、いかない人の両者がいます。
うまくいく人の傾向として、人の乗せ方、巻き込み方がうまいのだと思います。
しっかり話を聞いてもらえるので、アイデアも次々に展開し、楽しくなるので、こちらも親身になって、ついつい提案してしまいます。
時間もないのに作業が増えてしまい、気がつけば私自身の首をしめていたということもあります。
その反対に、うまくいかない人の場合、聞く耳をもたないということが分かっているので
結果的にはこちらからの提案も減り、親身になりにくくなります。
おそらく、人の意見を聞き入れられないことは他で数多くあり、それが積み重なって、頑固になっているはずで、商売がうまく行き難いだろうと思います。
前回の話題に対して、質問をいただいた方への明確な答えが出せずに申し訳ないのですが、
私としては、気持ちを切り替えて、集客をあまり考えずに、デザインすることにしたとお答えします。
商売がうまくいかない人と、うまくいく人の二極化が進んでいるような気がして、世の中の縮図を見ているような、思いになるのでした。
インパクトのあるチラシデザインと集客
チラシを作る際、
A.誰もが知っている大手企業の誰もが知っている商品のチラシ
B.小さな会社やお店が販売する商品のチラシ
このどちらなのかによって、チラシ作成の考え方が異なります。
Aの場合、そもそもその企業を知っているというだけでも、信頼度は高く、その上、知っている商品となると、もう、商品の説明はなくても十分に信頼はされているわけです。
広告賞に入賞するようなインパクトだけ狙ったデザインやアート作品のようなイメージ的なデザイン、そして、気の利いたキャッチコピーだけでいいのだと思います。
しかし、小さな会社やお店の商品となると、そういうわけにいきません。
人はよく知らないものを買わないものです。
まずは、その会社やお店を知ってもらうこと、そして商品を知ってもらうことが重要です。
そのためには、説明が必要になります。
先日、歯科医院と打ち合わせをし、「インパクトのあるチラシ作成」を依頼されました。
「分かりました」と答えたものの、先方からの条件は、院長の顔写真は載せたくない、患者の声も取れないし、載せられない、治療料金も説明はなく料金のみ、よくある質問もいらないとのこと。
掲載するのは、「このようなことでお困りの方は当院へお越しください!」という、虫歯、インプラント、歯周病といった症状の羅列と「痛くない治療を目指します!」というキャッチフレーズ、住所&地図など基礎情報だけです。
空いた空間には、信頼・安心感のあるイラストを入れたいとのこと。
本当に困りました。
今や歯科医院はコンビニエンスストアより多く、飽和状態だと聞きます。
インパクトのある目立つデザインというだけで、はたして人が集まるのでしょうか。
インパクトがあると目に止まって、とりあえずはチラシを手にとるかもしれません。
しかし、せっかく手に取っても中身が薄く、きちんと説明がないと、安心感・信頼感が持てず、来院するまでには至らないと思います。
内容の薄さをデザインの力で信頼できるものに引き上げるには、会社や商品そのものの知名度がなければ、不可能に近いと思っています。
今回のような場合、チラシで集客できなければ、後々、デザインが悪い、デザイナーが悪いともなりかねません。
その前にきちんと認識のズレを擦り合わせる必要があると思いました。