思い込みだけで作るデザインのズレ

先日、医療関係の商品をクリニックに卸している会社へリーフレット作成の打ち合わせに行ってきました。

リーフレットの内容は、ある医療機器を紹介するもので、クリニックの受付に置いて患者に持ち帰ってもらうことを想定しています。ここでは、医療機器の名前は伏せておきます。

機器自体値段は診療費込みで10〜15万円。値段だけ聞くと、気軽に試すような商品ではないので、使ってもらうには覚悟が要る商品だと言えるでしょう。

担当者ご自身がワードで作ったデザインサンプルを見せながら、アイデアの提案も示されました。

 

イラストで分かりやすく「診察から機器を使用するまでの流れ」を説明すること。競合他社の同じ商品のリーフレットは有名なキャラクターを使って20代の若者にアピールしているので、それに対抗し、当社も若者に受け入れてもらえるようなスマホ画面をイメージしてアイコンなどを入れてかわいくすること。

イラストを使って流れを説明することもかわいく見せることも、どちらもよいアイデアです。

しかし、若者に受け入れてもらうためにスマホ画面をイメージするというのは、「若者はスマホが好き」という単純なイメージが一人歩きしてしまい、「誰に」「なぜ」「今、必要なのか」など、販促のためのデザインをする上で重要なことが考えられていないようです。少し説得力が弱いでしょう。

値段も安くはなく、先行している競合と足並みを揃えて若者全体をターゲットにするのもどうかと思います。

これらを正直にお話しし、「若者=スマホ」という方向性はなくなりました。

このように、個人の思い込みでデザインを作ってしまうと、どこか消費者との間にズレが生じてしまうと思うのは私だけでしょうか。

以前、沖縄の弁当屋のロゴをデザインした人が制作過程を説明していた記事を読みました。

デザイナーは、事前に電話で打ち合わせしたものの、「沖縄=ゴーヤー」という自分のイメージでゴーヤーをアレンジしたロゴを提案すると、却下されてしまったとのこと。

その後、沖縄まで出向き、再度打ち合わせで方向性を擦り合わせ、ロゴを作り直すと、とても気に入ってもらえたという内容です。

結果として、気に入ってもらえたので問題ないのですが、自分だけの単純な思い込みで作ったデザインを提案していることに驚きました。

これはプロのデザイナーとしてはいただけません。

「デザインしたもの」も大事ですが、なぜそのデザインなのかという、誰もが納得できる理由もデザイン同様、大切です。

理由を考え、踏まえた上で、まとめて、具体的なイメージを作り上げていくのがデザイナーなので、大変な仕事。

とはいえ、その作り上げたイメージがぴったりはまったときのお客様の喜ぶ様子を見ると、これまでの苦労を忘れてしまいます。

それが、デザイナーという職業のおもしろい点だと思います。

 

 

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